静的ストレッチの定義とは(言葉のむつかしさについて思ったこと)

ちょっと今回はまじめ気味に書いてます。

いつも不真面目に書いてるわけじゃないんですけどね。

何を思ったか。

「言葉の持つあやふやさ。」

これです。

例えば、誰かが「運動した」と言ったときに、体育大学を出ているAさんは2,3時間トレーニングしてやっと運動したということになるかもしれない。けど、運動を学校の体育でやった程度のBさんは、近くの公園を30分散歩したことが運動したということになるかもしれない。

ただ「運動した」と言っても、人によって運動という言葉の意味、定義はその人のそれまでの知識、経験によって大きく違う。

この間、動的ストレッチと、静的ストレッチについて書いたのですが、同様に「静的ストレッチ」についても人によって意味、定義が違う。

現時点での一般的な静的ストレッチの意味、定義って何だろう?と思うキッカケがあったので、静的ストレッチについて掘り下げてみた。

まずストレッチとは。ストレッチの目的

その前に、まずストレッチとは。

スポーツや医療の分野における、ストレッチとは、 体のある部位の筋肉を良好な状態にする目的でその筋肉を引っ張って伸ばすこと。

この定義に特に異論はないと思う。

で、この「ストレッチ」という言葉は、1960年頃にアメリカで発表されたスポーツ科学の論文中で使われ始め、1970年代後半より急速に概念が広がったもの。ボブ・アンダーソンの著した『STRETCHING』(1975年)が普及を大きく促進したといわれている。
※参考文献wikipedia ストレッチ(2019/5時点の情報)

ボブ・アンダーソン(Bob Anderson):
1945年カルフォルニア州フラートンに生まれる。カリフォルニア州立大学ロングビーチ校に学び体育学における終身教員資格を取得して卒業。アメリカの様々なスポーツチームでストレッチングを指導した方。

これが今の世の中で言われている静的ストレッチとなり、現在広く用いられているもの。

で、ストレッチングの目的とは。

・コンディショニング
・傷害予防
・リハビリテーション

の3つがあげられると思う。背景としては骨格筋の筋緊張の緩和,関節可動域の増大,末梢循環の促進による疲労物質の除去などの生理学的効果を得るため。
※参考文献 信州大学医学部 スポーツリハビリテーション「ストレッチング」

この定義にも特に異論はないと思う。

静的ストレッチとは、その効果

じゃあ、静的ストレッチとは何か。

静的ストレッチ:
筋肉をゆっくりと伸ばし、やわらかくして可動域(動く範囲)を広げる。それによってその後の練習での怪我を予防するもの。
しかし近年は運動前の静的ストレッチは可動域を一時的に広げることにより、力の伝達のロスや、不安定な関節が怪我を発生しやすくするとも言われている。
運動後に行うことで、パフォーマンス向上や怪我防止につながると言われている。時間については団体・学者により推奨値が異なるが、20秒程度を適当とすることが多い。
なお、筋肉をゆっくり伸ばすのは伸張反射を防ぐため。筋肉には「筋紡錘」と呼ばれるセンサーがあり、筋肉が瞬間的に引き伸ばされると筋紡錘から脊髄へ信号が送られる。
すると脊髄から筋肉を収縮させる信号が出され、結果として筋肉が反射的に(つまり意思とは関係なく)収縮する。
これを「伸張反射」あるいは「伸展反射」と呼ぶ。伸張反射は筋肉が急激に引き伸ばされたときに起こる防御反応であるが、静的ストレッチにおいては逆効果となるため、これを避ける。
※参考文献wikipedia ストレッチ(2019/5時点の情報)

現時点での静的ストレッチとは、対象部位をやわらかくして可動域(動く範囲)を広げるもの。しかし、伸ばした部位の反応は伸ばす前よりも遅れる。そのため、伸ばす部位を間違えると力の伝達のロスや、不安定さにつながると考えられる。

伸ばした部位の反応が伸ばす前よりも遅れることについて、研究論文があった。以下抜粋。

目的:静的ストレッチングがジャンプ能力に及ぼす効果
方法:静的ストレッチング(この実験では30秒間のストレッチング)前後で,生理学面として伸張反射の潜時、機能面として等運動性筋力(60 deg/secと240 deg/sec)、ジャンプ能力として垂直跳び、立ち幅跳びを計測
結果:静的ストレッチング前後で比較したところ、ストレッチング後に伸張反射発現までの潜時、60 deg/secの筋力、垂直跳び、立ち幅跳びは有意に低下
※参考文献 静的ストレッチングがジャンプ能力に及ぼす効果(2008年)

詳しくは直接論文を確認いただきたいが、ストレッチ後すぐに瞬発力を要するような競技には静的ストレッチは向かない。逆に言うとパフォーマンスは置いておいて、体の可動域(動く範囲)を広げることを目的として使う場合に有効と考えられる。

思ったこと(何事も鵜呑みにしない)

ケースバイケース:

今回は静的ストレッチとは何か、背景、概要、現在の認識を書いてみた。自分としては、世の中で考えられている静的ストレッチは何かを勉強するきっかけになった。

静的ストレッチが必要なタイミングですればいいし、静的ストレッチを運動前にやってはいけないということでもないと思う。

だって人によって運動のレベルは違う。

プロアスリートなら、運動前に優位に機能低下するとなると、避けたほうがいいと思うけど、健康増進のための運動なら柔軟性が増したことによるメリットのほうが多い場合も考えられるので。

言葉の定義を明確にする:

言葉の定義ってむつかしいと思った。

世の中にあふれている言葉を皆同じ認識では使っていない。
止める動作をするストレッチを静的ストレッチと言われればそれはそう。
けど、数十秒止めて伸ばすことを静的ストレッチという人もいる。
又、ストレッチの強度も併せて静的ストレッチと言っている人もいる。
そういう部分で認識の齟齬が起きる。

やっぱり、「目的が何か」に集中する:

大きなポイントは、目的意識だと私は思う。
正直、言葉の定義とかは人によって違うのだから。

運動前に静的ストレッチをすると言われたときに、人によって色んな考えが発生する。

なので、運動前にお尻を静的ストレッチしましょうじゃなく、運動前に大殿筋部分の硬さをとる必要があって、その目的で、痛くない強さで30秒間伸ばしましょう。と言えばいい。

目的が何で、そのために何をする、理由はこう。

毎回そんなことやってられない、と思う部分もあるけど、相手に理解してもらいたい場合は特に重要なことだと思う。

最後に

言葉のむつかしさと目的の重要性。

言葉って、人が勝手に定義してそれが広まったものなわけで、人によって認識が違う。それを如何に分解して伝えるか。

何についてやりたい、話したいのか。

結局はコミュニケーションが一番大事って話でした。